GarminのハンディGPS機を新しく購入した。新しく、といっても今回入手したのはeTrex Legend HCxという2008年ごろの製品で、ちょっとどころか随分と古い。じつはこの型ばかりこれまでもう10台近く買ってきている。いま手元にあるのもメインとサブと部品取りになった3台とで、どれも新品で購入して、相当酷使してきている。きょう届いたものは倉庫から出てきたという「新品同様品」。これで、3個イチで組んでちょっと動作があやしくなりつつあった最古参機をようやく引退させてやれそうだ。
●昔のGPSでは、緯度と経度ぐらいしか表示されなかった。それにしてもガムテとタイラップでハンドル固定・・・我ながらなんて適当な。
DOAでは2010年の開催当初から数年間GPSラリーも併催していたことは前にも書いたが、それ以前に3回ほど開催したGPSラリーイベントはもちろん、さらにそれよりずっと前の山遊び時代、国土地理院の地図に替えて90年代の後半からハンディGPS機を使いはじめた。現在に至るまでGarminの機種にはいくつかの大きな変革期があって、たとえばシリアルケーブルからUBSへの移行。単三電池2本への省力化と長時間駆動。内部メモリ増量マップ表示。カラー高精細ディスプレイ採用。SDカード外部メモリ採用。衛星捕捉能力の向上も要所要所であったと思う。eTrex Legend HCxはそれらの近代的機能をひととおりコンパクトなボディにまとめた機種でひじょうに使い勝手がいい、と思って愛用している。米軍でも採用されているだけあって過酷な使用にも忍耐強く応えてくれるが、防水性だけはいつまで経っても向上しないのが玉に瑕。これまで壊れてきた個体はすべて水没による故障が原因だ。
ただ、どんなに優れた精密機器もリリースから10数年も経てば、さすがにここ最近の機種の性能には相当、いやかなり見劣りする。CPUやメモリがそろそろ古典の域の水準に達してきているので動作がトロい。なんといっても捕捉する衛星が米軍が提供している「GPS」のみで、日本の「みちびき」やロシアの「GLONASS」、EUの「Galileo」などに対応しないので、比較すると精度がもうひとつといった感がある。経験上、砂漠で使う分には旧機種であろうともかなり実用性は高いのだが、緑が濃くしかも急峻な山岳地帯の多い日本では衛星を頻繁にロストする。できれば複数、別種類の衛星を常に捉えていたいのだ。しかしいちばんの難点は、小さくしかもドットが荒い画面では老眼鏡を通してすら文字の判別が困難になってきたということ。これは機器の問題ではなく運用側の問題とも言えるが如何ともし難い。近年はタッチスクリーン採用機も増えてきているものの、これについてはなんとも言えない。個人的にはグローブを嵌めた指先での操作がしづらいというのはアウトドアではむしろ不利にすら思えてしまう。しかしその反面、物理ボタンを排除することで防水性を向上させているのはメリットである。利便性としてどちらを取るかということだ。
長所も短所も知り尽くして愛用してきたGPS機材だが、しかしここ数年のログ取り作業では、じつはサブおよびバックアップの扱いとなっている。なぜなら上記に挙げたような新し目の機能のすべてはほぼすべてiPhoneに搭載されていて、しかも圧倒的に凌駕しているとさえ言える部分が多々あるからだ。あまり話題になることもないがiPhoneに組み込まれているGPSチップの精度はかなりいい。聞くところによるとAndroidのハイエンド機と比べてもダントツらしい。GPSアプリや地図アプリと組み合わせれば、GarminとPCで行っていたことはもちろん、それ以上のルート編集作業まですべて1台で完結できてしまうのが素晴らしく、そしてある意味おそろしい。カメラやビデオと同じように、GPS専用機が売れなくなっているというのも当然だろう。拡大縮小も自由自在な画面表示も老眼に優しいし。あえて欠点を挙げるとすれば、タフな専用機に比べるとやや壊れやすい(しかし完全防水である)、ログ取りしているときのバッテリー消費がかなり激しいといったところか。それらはいくらでもフォローすることが可能なので、精度を優先したルートのログ取りの場合、GarminのGPS専用機の出番はそれほどないというのが正直なところなのだ。
船舶や航空機用、軍用のGPS機などなどを四苦八苦しながら運用してきた諸先輩の時代からはだいぶ扱いが楽になったと思うが、それでも振り返ると、シリアルケーブルとPCやワンダースワン(知ってる?)とのデータ連携や自作地図の読み込み、システムの日本語化、電池の瞬断対策、米軍のGPS欺瞞信号補正と解除、週数ロールオーバーステートメント、2000年問題エラー・・・これまで自分が経験しただけでもGPS機運用にはじつにいろいろなことがあった。そんなトラブルの数々を解決してもうこれ以上は何もないだろうという安心、それゆえに主力機材としての地位をiPhoneに譲ったとしても専用機には絶大な信頼がある。最近もRallyCrankingの道探しで、踏み分け跡すらない霧の山中で完全に帰り道を見失い、山中を迷走しているうちにiPhoneはバッテリー切れ。常に駆動させているサブのGarmin機のトラックバックだけで戻ってきたことがあった。まさに「あなたを守る懐刀」と骨身に染みたのである。まだ当分はポケットに入れておくのを忘れないようにしたいと思う、予備の乾電池といっしょに※
ところで古いラリーストの間では、2000年前後にリリースされた、独立アンテナで横置きもできるGarmin GPS2やGPS2+がしばらく人気だったな、とふと遠い目に。けっこう数も出たと思うが、いまあれはどこで眠っているのだろう。そういえばアメリカから個人輸入したGPSアンテナを接続して精度あげたり、Garminの専用コネクタを樹脂で型取りして安く提供してくれた人がいたり、試行錯誤だったけど楽しかった時代でもある。 ※古いGPSは電池の消耗速度が激しくて、数時間で8本が空に。交換用と万が一の予備2セットを背負って海外のラリーを走ったがこれがハンパなく重くてトラウマ (-_-;